Case5

既存CB造の住宅を再生 〜北海道別海町〜


道内で住宅不足解消と防寒対策を目的に、昭和の中期から後期にかけて大量供給された補強コンクリートブロック造の住宅ストックを有効活用し、『DAN壁』によって高断熱かつ暮らしやすい間取りにリノベーションした住宅が北海道・別海町に完成しました。

 かつて北海道の住宅不足解消と住まいの防寒対策を目的として、数多く建てられたのが三角屋根のCB造住宅。木造住宅の性能・機能の向上が進んだことにより、CB 造住宅の新築はほとんど見かけなくなっていきましたが、CB造住宅は耐久性が高いため、今でも使われているストックが少なくありません。ただ、CB造は増築が難しく、解体するにしても木造より費用がかかるなどの理由でなかなか手を付けにくいのが現状です。

 しかし、優れた耐久性や耐火性、遮音性、蓄熱容量の大きさなどを活かすことで快適・省エネな住まいに変わる可能性があるのもCB造の大きな魅力です。今回別海町でリノベーションしたCB造住宅も、『DAN壁』など現在の設計・施工技術によって高断熱・高耐久化しつつ、ブロックならではのデザインを提案した点が大きなポイント。設計は札幌の小坂裕幸建築設計事務所(小坂裕幸代表)、施工は地場工務店の㈲鈴木建設興業(鈴木尚寿社長)が行っています。

 建物は昭和の終わり頃に建てられたという延床面積約26坪の平屋で、昨年10月、リノベーション工事に着手。CB造の躯体は、基礎も含めて劣化などの問題はまったくなく、間取りの変更にあたって室内側の壁の一部を撤去したほかはそのまま流用。二重サッシだった窓回りも、同じサイズでアルゴンガス入りLow-Eペアガラスの樹脂サッシに入れ換えると躯体を削る必要が出てくるため、小さいサイズに交換するか、コンクリートブロックで塞いで窓自体をなくしました。

 そしてより高い断熱性能を確保するにあたって、透湿性のあるビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)に、あらかじめ湿式仕上げ用の補強下地層を工場施工した外断熱外装パネル『DAN壁』を外壁に採用。小坂裕幸建築設計事務所では以前から木造の新築物件で採用しており、今回は外断熱による温熱環境改善と、CB造の躯体をそのまま室内に現したデザイン性も狙っています。鈴木建設興業は『DAN壁』の施工が初めてでしたが、ダンネツでパネルの割付やジョイント部分の調整を行うなど全面的にサポートしました。

 パネルサイズは3×6尺で、断熱厚はできる限り少ないエネルギーで暖かくなるよう150mmとし、長さ185mmの断熱パネルビスとワッシャーで既存の外装モルタルと躯体に固定。ビスが極端に長いため、ビスの留め付け部分はEPSを40mmほど座掘りし、ビスを打った後にEPSのキャップを埋めています。なお、座掘り加工を行う関係上、補強下地層は現場施工としました。

 デザイン面では、現しのコンクリートブロックや、間仕切り壁の石こうボード、小屋組などを直接ホワイトのEP(エマルションペイント)塗装で仕上げ、床はナラの無垢フローリングとすることにより、北欧風のデザインというオーナーの希望を叶えています。外装は室内と同様にホワイトのトップコートで仕上げました。

 オーナーによると「薪ストーブもありますが、床下暖房だけで真冬も過ごせそうなほど、間違いなく暖かくなっています。春先はまだ暖房を使いますが、リノベーション前と比べると灯油消費量は明らかに少なくなりましたた」と話しており、奥様も小屋組現しによる頭上の開放感や、水回り・収納スペースの拡大などに満足している様子です。

 小坂裕幸建築設計事務所の小坂代表は「動線が楽で暮らしやすいCB造の平屋に、高い断熱性能を持たせることで、木造より20~30年は長く暮らせるようになりました。コンクリートブロックの良さは劣化することがなく、耐久性が高いこと。既存のCB造住宅は解体するとなると木造より費用もかかり、もったいないのですが、今回の事例を見てもらえれば、CB造のほうがいいという人も出てくるのでは」と話しています。

 別海町では、市街地で公営のCB造住宅を購入して住んでいる町民もいるといい、鈴木建設興業の鈴木和也専務は「CB造住宅のリノベーションは、構造上壊せる部分と壊せない部分を理解したうえで行う必要があるため、苦労する場面もありますが、要望があれば今後もリノベーションを手がけていきたいですね」と語っています。

(『北海道住宅新聞2019年7月5日号』より転載・一部改編)